ホスピス、緩和ケア看護覚書*カナダ編

カナダでホスピス看護師をしています。2009年9月からバンクバーの某大学院 でMaster of Science in Nursing を始めました。End of Life CareのCNSになれるようにがんばります。半学生、半看護師の生活です。そして3児の母親でもあり、カナダ人の夫とは11年たっても熱愛中でごじゃいます。ブログに登場する人物名はすべて仮名です。

こそこそ

親に隠れてなにをこそこそしてるんだ!なんて言葉は珍しくない日本。でもコソコソせず堂々とオープンすぎるのはどうでしょうか?

うちのお嬢様は昨日で17歳になりました。高校2年生です。ママの家から我が家に引越しして1ヶ月あまり。カルチャーショックの連発です。4ヶ月付き合っている彼がいます。地元の子ではなく車でハイウエイを飛ばして1時間のところに住んでいる子です(友達の友達で知り合ったとか)。週末になると長距離バスに乗ってお互いが行き来するというなんともけなげな関係で、彼は一生懸命バイトをして自分で車を買ってもっと頻繁に会えるようにしたい(16歳から免許は取れますから)とバイトにもせいを出している(AJはバイトを探している段階)のです。

で、先月彼女から避妊薬を買って欲しいと言われました。こちらでは妊娠防止には経口避妊薬が一番の選択です。コンドームは成功率が低く、どちらかというと性病防止という役目が強い(使用方法の教育が不足していると個人的は思うのですが)。避妊薬は保険外になるので高いです。オールAを取る賢い子です。避妊薬についてインターネットでよく調べて副作用など承知の上で飲みたいと。彼とそろそろかなと最近ずっと話し合っていて、彼の父親は彼のためにコンドームを買ってきてくれた、だから私たちの役目は避妊薬を買うことだ、と彼女はきっぱりと言うのです。そう堂々と話せることが理解できませんでした。私が日本人だからわからないのよ。こっちじゃ当たり前だわ、って。そういう理由で私を説得さすことはできません。長い話し合いの末自分のお小遣いで買いなさいとつき返しました。GPのところへママが連れて行ったらご親切に2ヶ月分の試薬までもらったそうで。すぐ飲むとわざわざ報告をしてくれました。

そしてその次は自分の誕生日だから彼の家に2泊していいかと聞かれました。避妊薬のことを父親まではっきり話したその上にこれか?!ときっぱりだめと言いました。そうしたらまるでロミオとジュリエットになったようにおいおいと何日間泣き過ごしたでしょうか。そしたら論文のように長々とこれは不当だと、手紙までいただきました。泊まると言っても彼の両親もいるし、部屋は別々だし、家が古くて床がきしむから、親の前でこそこそ密愛はしないとまで書かれていました。じゃあどうして避妊薬が必要なのか~!と鼻で笑うほどあきれてしまいました。

私はセックスを反対しているではありません。人間として愛し合っていれば当然の行為だと思うからです。でもまだ精神的にも経済的にも自立をしていない子供が、堂々と公言することなのだろうか?もちろん避妊は大切です。望まれない子供の出生ほど悲しいものはないから。でもそういうイッチョマエのことをするのなら、自分で自分の行動に責任を取れるようになって欲しいと思う。お金を出して欲しいとか、許可を親からもらわないければならないのなら、最初からするな!と言いたい。私としてはこそこそしてもらった方がずっと気楽だとも思う。それだったら真に自分の行動に自分だけで責任と取っているから。

結局お泊りはあきらめたが、本当に難しいと思う。文化が違うの一言では片付けられない。ちなみにブログに載せることも許可つきです。ほかの日本人ママがカルチャーショックにならないように教えてあげたら、だって!いったい最近の若者の思考過程がわかりませんわ。私の両親も同じようなことを思ったのかね~

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貧困と病気

難しいと頭を抱えていた今期のコースも、なんとか一つ目のペーパー提出が終わりホッとしたところ。課題は5つの法律の中からひとつを選び、どういう理論が基本となって作られたか、そのためどういう影響がヘルスケアにでているか、看護はどうかなどということを書かなければならなかった。私が選んだのはカナダヘルスアクト、医療基本法みたいなものだ。掘り下げてみればみるほど、いろいろな現象が浮かびあがり自分でも満足いくものができた。

以前は仕事もせずブラブラしている人をみると、自分の意思で定職につかないのかと思っていた。貧困生活に陥るのはその人が自分の意思で勉学をおこたり、技術も習得せず、などと思っていた。しかし、最近は考えが変わった。 “ライフスタイルによる病気”という言い方がはやる昨今。肥満や喫煙、その人自身の責任しだいのように受け止められるが、そうではない。収益を目的とした広告や学校のカフェテリアでのジャンクフードの販売などは個人の責任ではない。もちろん意思が強い人にとっては広告が激しかろうと、健康的な選択をするだろう。しかし生まれた時から、虐待を受けて育ったら?親が教育の価値観を持たず、学校へ行くというチャンスがなかったら?避妊の教育を受けることなく若年のうちに妊娠してしまったら?環境因子により、貧困に追いやられる人もいる。それゆえ病気になる人もいる。環境因子は個人の責任ではない。社会が取り組んでいかなければならないことだ。

で、今日訪問で訪れた家は想像を絶するものだった。以前にも書いたがハイリスクな場所を断ることはできる。しかし危うそうなところを継続して訪れることもある。うわさには聞いていたけれどこれほどはと思う所だった。一人目は車庫に住んでいる。以前は浮浪者だったそうだが、、、。車一台入る車庫にベッドとテレビ、ユニットバスがあり、コンロが二つ置いてある。窓がないのだ。真っ暗な暗がりで彼は生活しているのだ。両足に転んでできた傷が一年近く治らない。その理由は合併症の多さだ。足への循環が悪いからだ。そして環境因子も高いだろう。松葉杖をつきながら自分で洗濯や清拭をすると言う。コンクリートの床にダンボールをひいて、清潔とはいえない環境だ。しかし病気のため細かく整理整頓。行き届いた掃除なんてものはのぞめない。週に何回かは食事サービスをもらっている。今日は日曜日。教会へ行きたいからできるだけ早く来てほしいと。教会へはハンディーダートという州の無料のお迎えバスサービスで行くそうだ。住んでいるところだけをみるとぎょっとする。しかし本人は気さくでかんじの良い方だ。彼だけではない、次の家も似たような状況で患者は良い人だ。そして次の次も、と毎日驚くような環境で生きている人々に出会う。

ああいうところに住んでいる人は自暴自棄なんていう思いはまったくな思い違いだと思い知らされた。ペーパーでも書いたのだが、貧困と病気のつながりはとても強い。発展途上国がその良い例だろう。しかしこの関係は発展途上国のものだけではない。資本主義社会の中でも注目されている。カナダもそのひとつだ。リサーチでその関連性は裏づけされている。収入が低くなればなるほど、慢性病が多く、病院の使用率も高まると。豊かな国の中でどうしてこのように差が出てくるかだ。国が豊かでも経済的収益はお金持ちにいくようになっていて、働き蜂以下には働いても働いても暮らしが楽にならないようになっているからだ。そして前回も書いたが国の生活保障が薄いと、働けなくなると(保障などがない仕事)かなりつらい生活になるのだ。今の職場に就職する時ある程度の心構えはあった。なんたって車の盗難一位なんてもらいたくない名誉をもつ街ですから。“その人の家へ行く”というのは本当にその人の生活のスナップショットを見るようなもので、病院で患者と会うのとはまったく異なる。教科書で読むよりずっとリアルだった。リアルすぎで今夜は心がざわついている。

お知らせ

お知らせが来ました。興味のある方はどうぞ。充実した旅行になると思いますよ!

第36回アメリカがん看護学会(ONS)年次総会参加旅行
テーマ:最先端のがん看護の情報に触れることにより、がん医療・看護への見識を深め、グローバルな視野を持つ
日時:4月27日(水)~5月3日(火)
訪問地:アメリカ・ボストン
内容:世界最大のがん看護専門学会への参加 ※各自応相談によるサポートあり(ONS年次総会参加申し込み手続き、サマリーの日本語訳など)
募集人数:10名 ※先着順
募集締切:3月下旬予定 ※以降は問い合わせにて確認
旅行代金:問い合わせにて確認
E-mail:36ons@dense.co.jp
http://www.dense.co.jp/ons/36onscongress.pdf

詳細は以下pdfをご参照ください。

http://dense.co.jp/ons/36onscongress.pdf

いたせりつくせりの訪問看護

訪問看護のオリエンテーションが終わり、独り立ち。先日フル量の仕事をもらい、それも立派に終了。ちょっと誇らしげに思った。オリエンテーションは終わったものの、教育はまだまだ続く。うちのオフィスだけでなく、同じHAのオフィスが共同して行う新採用者の教育はとても充実している。今週行ってきたのは、先日はWoundCareで今日はIVについて。

病院にいた時やホスピスへいた時も積極的にWoundCareのワークショップに通った。知識があるのとないのでは看護に差がかなり出るからだ。30%の仕事がWoundCareということで、内容はとても充実していた。基礎的な知識から実践的なところまで。なるほどと思うことが多かった。このシリーズは6回あって、6回終了すると完璧ということになる。次回は糖尿病や、静脈や動脈系疾患関連のWoundCareになっている。楽しみだ。

今日はIVコース。3回に分かれていて、今日は基礎知識とPICCのドレッシングチェンジまでだった。これまたしっかりとエビデンスに沿ったポリシーやクリニカルガイドラインで安心してケアが行えるというもの。内科にいた時に雑然として教わっていたことに比べるとかなりレベルが高いと思った。

私はすでに経験があるのでいかないが、緩和ケアの教育も3回用意されている。

病棟だったら、同僚に聞いて、とかマニュアルを探しにいくこともできるが、訪問は一人で患者の家を訪れなければならない。そういう面でもしっかり教育をすることが重要になるのだろう。

恵まれている環境で、いたせりつくせりだな~と関心する今日この頃だ。

福祉国家

カナダは医療と高校までの教育が無料なので、福祉国家と思っていた。税率も高く(収入にもよるが所得税は38%もつく)。生活補助を受けて生きている人もたくさん見受ける。定職にも着かず、ぶらぶらしている若者から壮年期の人たちを見かけることが多いので、”いたせりつくせりの国だから、働かなくても生きていける”と、努力しない人が多いのよ。そういう人に税金が使われて、間接的にお世話をしているみたいで正直いやだった。

昨今は医療費の増加、財政困難によりアメリカのように医療をプライベート化しようという話が頻繁に騒がれている。それに医療費削減の波は刻々と国民を襲っている。例えば訪問でジョクソウの包交に使用する物品は訪問看護師が持参していたが、今は2週間立つと患者が購入して準備しなければならない。もちろん全員が対象になるわけでなく、経済的理由があれば免除になるのだ。低所得者にとっては変わりはないがそれ以上の国民にとっては大きな違いだ。救急車の利用も自宅から施設(病院など)は以前より料金の請求があったが、それ以外は無料だった。ホスピスに入院している人が緩和目的で放射線療法を救急車を使って通っていた。しかしこれも患者へチャージさせるようになった。少しずつ静かに無料サービスがなくなってきている。

医療の有料化は医療費削減につながるのか? 有料化によって低所得者の医療へのアクセスが妨げられ、国民全体の健康指標が下がるのではないのか、という考えもある。医療というものを歴史的観念、公衆衛生の観念、社会哲学の観念、政治の観念から視察するとどうなのか、ということを大学院で学んでいる。文献から学ぶことは多い。統計学的にみても大変興味深い。

例えば、健康指標といっても平均寿命を使うこともあれば、新生児の生存率を使用することもある(他にもいろいろな指標がある)。発展途上国と先進国と同じ指標で比べても因果関係が浮き彫りにならないこともある。何を何の目的に比較しているのか注意しなければならないが、なるほどと感心するものがあるのでここに例としてあげてみたい。

例えば平均寿命の長さでは日本が一位だ。カナダはスエーデンの次で7位。巨大経済大国のアメリカは30位となる。しかし国民一人当たりの医療費の支出はアメリカがダントツの一位でカナダはカナダは5位、スエーデンは14位そして日本は20位だ(この結果は年度やどの機関が調査したかによっても多少の違いはある)。面白いことに費用と平均寿命は反対比例のようになる(先進国の間では)。アメリカの経済大国の名は誰もが知っている。しかし貧困層と高取得者の比率を比べるとこれまたアメリカが一番になる。福祉大国の北欧諸国は社会福祉費の高さで有名だ。そしてこれらの国は貧困の差が少なく健康指標も良い。雇用率、福利厚生、教育、犯罪率などで、アメリカ、カナダ、スエーデンと比べると、ゴールドメダルの多さはスエーデンがダントツだ。政治の傾向、社会福祉費の割合を比べると、カナダはお隣のアメリカの横に位置され、イギリスはカナダのお隣だ。とても驚いた。カナダは福祉国家の北欧からはとても離れた位置にいるのだ。

カナダの医療は無料だ。しかし病気になった時に援助してもらえる(生活に関して)額は低く、システムも手厚くない。国民の健康が基盤になっている国で長期的に健康がなくなると(病気になると)低所得者になってしまう図式が出てくる。日本のように生命保険に加入する人はとても少ない。”働けなくなった時”を真剣に考えている人はどれくらいいるのだろうか。マスメディアに踊らされず、国民すべてが真剣に考えなければならないことだと思う。

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