日本の方からよく聞かれる質問にここで答えます。ホスピスでの輸液。

ホスピスではIVは原則的にしないことになってる。ホスピスは余命が3ヶ月と診断されて、自宅療養が不可能な患者さんが“家”のような環境でいて医療行為が受けられるところとして来る。死が近づいて食べたり飲めなくなるのは自然なことであること患者や家族に理解してもらうことが看護をしていて重要なことになる。“なにもしない”から患者は飢餓や口渇から苦しんでいるのではないかと思う方が多いが、輸液をしても口渇感を軽減させることが出来ないことがすでに文献としてでている(他の理由は省略)。経口内服が不可能な人には症状をコントロールするために必要な薬を皮下注射で行うので、IV確保の必要ない。IVは合併症のリスク(感染、血栓など)があるので死に逝く人には不必要と考えている。

もちろん皮下輸液投与の例外があります。

例1)オピオイド中毒
マイケル(仮名)は骨転移の痛みがひどくISCIのHydromorphonの量が急激に増加していった。特にアジャバントの経口内服が困難になってからBTの使用量が増えてそれに伴い定時の量も増加していった。死が近づき意識が低下し、水も飲むことが不可能になってから、次第にMyoclonusを現すようになった。定時のHMを減量そして1000ccの皮下輸液を12時間かけて行い、Myoclonusは消失した。

Myoclonusは突然体のあちこちがビックビックと動くので特に骨転移のあるひとには耐え難い苦痛になる。その苦痛に原因を取り除くために皮下輸液が行われた。

例2)せん妄
PPS30%、急にせん妄が出現し、大声で家族に怒鳴り散らしたり、ガウンを取り除き裸に何度もなる。血液検査の結果著明な低ナトリウム血症を起こしていることがわかった。セレネース皮下注射を興奮時に使用と補正のめに1000ccの皮下輸液が行われた。

せん妄は見守る家族にとって大変苦痛なものだ。電解質異常が補正されれば意識状態も改善するけれど、癌の末期や心肺腎系の疾患ではそれだけでは補正できない(疾患の進行の勢いが早い)時もある。1000ccぐらい投与して効果がなければそれ以上の投与は行わない。セレネースや他の薬で対症療法となる。

例3)時間と気力を稼ぐ
PPS30%息子がオーストラリアから帰ってくることを楽しみにしている。息子が訪れた時、話が出来るくらいの気力が欲しいと懇願された。息子さんが現れる12時間前から投与を行い、患者は息子の訪問をとても楽しんだ。

もしかしたら効果はないかも知れないと言うことを十分理解してもらった上で行われた。

入院中に上記のような理由で何度も皮下輸液を受けるケースもある。一度はじめるとなかなか止められないというのも現実だ。しかし目的がリバースされない時は患者にメリットがないと判断して中止される。もちろん患者と家族の精神的サポートがとても重要になってくる。私達が回避したいのは不必要な輸液で呼吸状態の悪化(分泌物の増加や胸水の悪化)や腹水の悪化、サードスペーシングなどだ。これらで患者の苦痛を助長したくないからだ。“死が近づいて食べたり飲めなくなるのは自然なこと”これをいかにうまく伝えるかが重要なポイントだと思う。そして口渇にはしっかり口くうケアをすることで不快感はかなり軽減される。日本で体がパンパンになるまで(死ぬまで)輸液をしていた頃(患者)を思うと胸が痛む。