患者の病歴はとても重要だ。癌の末期といっても治療経過やその他の病歴で予命の推測や緩和治療の方針だって随分変わってくる。
先月コミュニティーから直接入院してきた85歳のジェームス。10年前に前立腺がんを診断されたけれど長い間症状は安定していた。最近、急な腰から足の付け根の痛みを訴え、骨転移とそれによる骨折が認められた。その上、不穏症状がひどくなり、妻は疲れきり、家では介護ができないからホスピスへ入院をとやってきたのだ。水曜日の午後にやってきて不穏症状が激しく転倒防止の監視のためCAが24時間部屋にいることになった。木曜日の血液検査から高カルシウム血症が認められため、皮下輸液と鎮静剤が開始された。私が受け持ったのは金曜日。PPSは30%不穏症状は前日より良くなっているとのこと。この高カルシウム血症が初回なのかどうか知りたくて(それによって予後が変わるから)カルテを読むけれど、とても簡素に書かれたGPからの紹介状が一枚だけ。患者のサマリーやがんセンターからの治療経過のサマリーのコピーもない。不思議に思いCRNに尋ねると、“情報がないのよ”とポツリ。訪問看護もつい先日サービスを開始したばかりで、何の情報ももらえなかったし、シイカ(HPCの医師)もこの入院でこの患者を紹介されただけ。入院歴を他病院も含めてPCで調べても放射線科の所見しかみつからないのよ。家族に聞いてみても、不穏症状がいつから始まったのかもわからない状態で、いったい誰が治療や介護をしていたのか、、と言う。
週末に入る前には患者を安定した状態もしくは予測がつくような状態にしたい私としては、これでは困る。シイカが来院した時、すぐにジェームスについてどうするのか尋ねた。がんセンターにカルテの参照をお願いし、その後シイカはGPにも電話をしてみると。がんセンターの情報によってはPCUに移して積極的な治療(高カルシウム血症に対する)をするかもしれない。とりあえず週末はこのまま皮下輸液をして月曜日に血液検査、という指示をもらった。午後4時にがんセンターからファックスが来たけれど、この患者は来院していませんでしたの一枚が送られてきただけ。シイカはとっくの昔に帰途へついている。CRNとどうしようかと話していると、どやどやと家族が訪れてきて医師か看護師と会って話がしたいと言う。
家族からの質問は高カルシウム血症がどうなったかと予後が知りたいと言う。私はシイカが残した指示や所見を説明し、正直に情報がないうえに金曜日でどこもアクセスができなくなってしまった。だから家族からもっと情報をもらいたいと話した。その時妻は不在だったが、近所で2人をサポートしていた息子夫婦と遠距離だが2人に親しかった息子夫婦とその孫で検査技師(医療関係者がいると話が通じやすい)がいた。まずはがんセンターで、だれが医師だったか、どんな治療を受けたか、どういう風に話をされたかを聞いた。ジェームスは確かにがんセンターに通っていたことがわかった。話から大体の治療の推測ができた。不穏がいつから始まったのか、最初はわからないとしか言わなかったけれど、細かく説明をしてたどっていくと、もともと痴呆様の症状が昨年末から出だしていたこと。それでも日常生活は送れる程度(名前や日にちが混乱する程度)だったが骨折がわかった1ヶ月前ころからひどくなり、さらに1週間前から介護する妻に手をあげる様な暴力的な態度が突然出てきたことがわかった。月曜日にはこの情報をもとにがんセンターに問い合わせをしなおさなければと思いながら、もしかしたら週末もたないかも知れないとも思った。家族もそれが心配で確認したいと言う。幸運なことに木曜日シイカが説明したことは最悪のことも含めていたし家族もそこをちゃんと覚えていたので、説明は難しくなかった。医師と電話で話せるようにセティングをしましょうかと尋ねると、あなたの説明で十分わかりましたというので、この経過と情報を丁寧に記録した。症状が悪くなるまで、HPCへの照会もなく、訪問看護の開始も遅れる患者が未だにいるなんて、、もっとGPへの教育が必要だとCRNと話をした。
結局ジェームスは日曜日(私の3日目の日勤)に、呼吸状態が悪化して亡くなられた。家族がちょうど訪れている時だった。完全ではないけれど金曜日に家族と話をしてみなが同じページにいることを確認していて良かったと思った。
蛇足、、、
カナダで働きだして驚いたのが、Medical Transcriptionistという仕事の存在。医師は電話やレコーダーを通して患者のサマリー、コンサルテーションの所見や手術、放射線の所見などを言う、そうするとこの仕事をしている人たちがそれらをタイプしてくれるのだ。フォーマットは同じで、きれいにタイプされたものだから、その読みやすさと言ったら、、、読むことが不可能に近い医師の文字を解読することなく、患者の病歴が簡単に理解できる。。それに忙しい医師の仕事量を減らすことにもなる。嬉しい職業の存在だ。
ファーマネットというものもある。どこの薬局であろうと、個人の過去の処方歴が参照できるシステムだ。特に病歴が長かったり、複数の専門医にかかっている場合に便利だ。もちろん頓服薬をどれ位服用しているかは患者に聞かなければならないけど。
先月コミュニティーから直接入院してきた85歳のジェームス。10年前に前立腺がんを診断されたけれど長い間症状は安定していた。最近、急な腰から足の付け根の痛みを訴え、骨転移とそれによる骨折が認められた。その上、不穏症状がひどくなり、妻は疲れきり、家では介護ができないからホスピスへ入院をとやってきたのだ。水曜日の午後にやってきて不穏症状が激しく転倒防止の監視のためCAが24時間部屋にいることになった。木曜日の血液検査から高カルシウム血症が認められため、皮下輸液と鎮静剤が開始された。私が受け持ったのは金曜日。PPSは30%不穏症状は前日より良くなっているとのこと。この高カルシウム血症が初回なのかどうか知りたくて(それによって予後が変わるから)カルテを読むけれど、とても簡素に書かれたGPからの紹介状が一枚だけ。患者のサマリーやがんセンターからの治療経過のサマリーのコピーもない。不思議に思いCRNに尋ねると、“情報がないのよ”とポツリ。訪問看護もつい先日サービスを開始したばかりで、何の情報ももらえなかったし、シイカ(HPCの医師)もこの入院でこの患者を紹介されただけ。入院歴を他病院も含めてPCで調べても放射線科の所見しかみつからないのよ。家族に聞いてみても、不穏症状がいつから始まったのかもわからない状態で、いったい誰が治療や介護をしていたのか、、と言う。
週末に入る前には患者を安定した状態もしくは予測がつくような状態にしたい私としては、これでは困る。シイカが来院した時、すぐにジェームスについてどうするのか尋ねた。がんセンターにカルテの参照をお願いし、その後シイカはGPにも電話をしてみると。がんセンターの情報によってはPCUに移して積極的な治療(高カルシウム血症に対する)をするかもしれない。とりあえず週末はこのまま皮下輸液をして月曜日に血液検査、という指示をもらった。午後4時にがんセンターからファックスが来たけれど、この患者は来院していませんでしたの一枚が送られてきただけ。シイカはとっくの昔に帰途へついている。CRNとどうしようかと話していると、どやどやと家族が訪れてきて医師か看護師と会って話がしたいと言う。
家族からの質問は高カルシウム血症がどうなったかと予後が知りたいと言う。私はシイカが残した指示や所見を説明し、正直に情報がないうえに金曜日でどこもアクセスができなくなってしまった。だから家族からもっと情報をもらいたいと話した。その時妻は不在だったが、近所で2人をサポートしていた息子夫婦と遠距離だが2人に親しかった息子夫婦とその孫で検査技師(医療関係者がいると話が通じやすい)がいた。まずはがんセンターで、だれが医師だったか、どんな治療を受けたか、どういう風に話をされたかを聞いた。ジェームスは確かにがんセンターに通っていたことがわかった。話から大体の治療の推測ができた。不穏がいつから始まったのか、最初はわからないとしか言わなかったけれど、細かく説明をしてたどっていくと、もともと痴呆様の症状が昨年末から出だしていたこと。それでも日常生活は送れる程度(名前や日にちが混乱する程度)だったが骨折がわかった1ヶ月前ころからひどくなり、さらに1週間前から介護する妻に手をあげる様な暴力的な態度が突然出てきたことがわかった。月曜日にはこの情報をもとにがんセンターに問い合わせをしなおさなければと思いながら、もしかしたら週末もたないかも知れないとも思った。家族もそれが心配で確認したいと言う。幸運なことに木曜日シイカが説明したことは最悪のことも含めていたし家族もそこをちゃんと覚えていたので、説明は難しくなかった。医師と電話で話せるようにセティングをしましょうかと尋ねると、あなたの説明で十分わかりましたというので、この経過と情報を丁寧に記録した。症状が悪くなるまで、HPCへの照会もなく、訪問看護の開始も遅れる患者が未だにいるなんて、、もっとGPへの教育が必要だとCRNと話をした。
結局ジェームスは日曜日(私の3日目の日勤)に、呼吸状態が悪化して亡くなられた。家族がちょうど訪れている時だった。完全ではないけれど金曜日に家族と話をしてみなが同じページにいることを確認していて良かったと思った。
蛇足、、、
カナダで働きだして驚いたのが、Medical Transcriptionistという仕事の存在。医師は電話やレコーダーを通して患者のサマリー、コンサルテーションの所見や手術、放射線の所見などを言う、そうするとこの仕事をしている人たちがそれらをタイプしてくれるのだ。フォーマットは同じで、きれいにタイプされたものだから、その読みやすさと言ったら、、、読むことが不可能に近い医師の文字を解読することなく、患者の病歴が簡単に理解できる。。それに忙しい医師の仕事量を減らすことにもなる。嬉しい職業の存在だ。
ファーマネットというものもある。どこの薬局であろうと、個人の過去の処方歴が参照できるシステムだ。特に病歴が長かったり、複数の専門医にかかっている場合に便利だ。もちろん頓服薬をどれ位服用しているかは患者に聞かなければならないけど。