ホスピス、緩和ケア看護覚書*カナダ編

カナダでホスピス看護師をしています。2009年9月からバンクバーの某大学院 でMaster of Science in Nursing を始めました。End of Life CareのCNSになれるようにがんばります。半学生、半看護師の生活です。そして3児の母親でもあり、カナダ人の夫とは11年たっても熱愛中でごじゃいます。ブログに登場する人物名はすべて仮名です。

ホスピスケア

借り出される

英語が少ししか話せない患者さんなの、プライマリーになってくれない?とまた頼まれた。英語が話せなければ通訳を頼むが、いつもいつもというわけにはならない。今二人ほど先述の理由で担当地区が違ってもプライマリーになっている日本語を第一言語にしている患者さんがいる。

30年以上ここへ住んでいていてもやはり母国語が良いよ、と日本語で話しかけると喜ばれる。二ヶ国語話せるってこういう時に重宝するもので。私自身も懐かしい言葉と文化に触れてほっとする。

先日はソーシャルワーカーと共同訪問だった。患者さんの希望で私が付き添うことに。なので通訳を依頼する必要はないと言うと、ソーシャルワーカーに”本当に大丈夫?”と何度も念を押された。自分は通訳が本業でないから難しいのはわかっている。しかし3人で押しかけるのもなんだか気が引けた。ショーシャルワーカーの彼女とは長い付き合いで、彼女がこの訪問でどんなことを話すか知っているし、きっと大丈夫と望んだ。

ソーシャルワーカーはいつもののりでよく話す(心地よいほど話し上手な彼女)。何度か長すぎて最初に何を言っていたか忘れるほど。特に患者サイドがうなずくので、彼女はわかっているものだと話を進める。しかし現実は違う。わかっていないのに首を振るのは日本人の悪い癖だ。何度か、彼女のしゃべりを止めて通訳をした。無事終了。両サイドとも納得のいく訪問だったようで、ほっとした。

私が通訳を呼ぶ時もある。同じ言語でも違う通訳が来ると、同じことを言っても話す量が違うので、結構興味深い。きっと通訳さんの技量にもよるのだろう。

ソーシャルワーカーとの共同訪問に戻って、改めて思ったのは文化の違いの大きさだ。私にとっては日本人女性の普通の反応と思うことも、ソーシャルワーカーの目からは違うようにとられる。外に出てから日本文化の説明をしても、でも今こういう方向に進めとかないと後で困るのは残された家族でしょう、と。いや、家族も日本人だから北米人と同様には思わないと、私は思うけど、と伝えてみても真からの理解は得られなかったような気がした。その人それぞれの文化背景が人を解釈するのにとても重要な役割を果たしていることを改めて思わされた。こういうことからもこちらに住んでいる日本人の方の力になれたら、と思わずにはいられなかった。

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がんばりすぎ

缶詰していても結局ペーパーは期限どうりに書けず、延長願いへ。睡眠時間もそこそこで仕事へ行き、超忙しい仕事をこなし、、、結局体調を崩してしまった。これほど体がしんどいとメッセージを送ってきたのは本当に久しぶり。寝ても寝ても疲れが取れず週末になってようやく少し回復していきたように思える。年なんだから、、、若い時みたいに無理がきかないと思い知らされました。

で、何をそんなに熱気になって書いていたかと言うと、緩和ケア患者さんのヘルスケアへのアクセスについて書いていました。コンサルテーションの仕事を通して疑問がふつふつと沸き、調べていくうちに興味深いことにたどり着きました。ペーパーを書いている間に気づいたのだが政治ととても強いつながりがあるのだ、と。どうしてうちのHAが国全体の平均より、州の平均より、在宅とホスピスで亡くなる方が多く病院で亡くなる方の比率がだぜん低い理由もよくわかった。改めてシステムの基盤を作ったディレクターの才覚に感心させられた(同じ学部大学院の出身者。昨年は国レベルで表彰された方)。

がんや予後不良と診断され、最後をどうやって、どこで過ごしたいか、真の選択ができるためにはそれなりのシステムが整っていなければならない。そしてそのシステムは予算や政治、社会にも沿ったものでなければ成功にはつながらない。ここには詳しく書かないが大きなパズルの謎解きができたようで楽しんでしまった。

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お知らせ

お知らせが来ました。興味のある方はどうぞ。充実した旅行になると思いますよ!

第36回アメリカがん看護学会(ONS)年次総会参加旅行
テーマ:最先端のがん看護の情報に触れることにより、がん医療・看護への見識を深め、グローバルな視野を持つ
日時:4月27日(水)~5月3日(火)
訪問地:アメリカ・ボストン
内容:世界最大のがん看護専門学会への参加 ※各自応相談によるサポートあり(ONS年次総会参加申し込み手続き、サマリーの日本語訳など)
募集人数:10名 ※先着順
募集締切:3月下旬予定 ※以降は問い合わせにて確認
旅行代金:問い合わせにて確認
E-mail:36ons@dense.co.jp
http://www.dense.co.jp/ons/36onscongress.pdf

詳細は以下pdfをご参照ください。

http://dense.co.jp/ons/36onscongress.pdf

二つの楽しみ

一つ目は今週の金曜日に佐渡島の”鼓童”を観にいくこと。今回は子供たちも行きたいというので家族全員での鑑賞。子供は全員ドレスアップのため鏡の前でにらめっこしている。私は何を着ていこう。やっぱり着物かしらね。

二つ目は来月バンクーバーで開かれるホスピス緩和ケアのカンファレンス。北米のカンファレンスなので大規模だ。仕事がすでに入っていたので、最終日しか行けないがしっかり吸収したいと思う。日本から直行便でふらっといかがでしょうか?詳しいことはこちらで。来られる方がいらしたら、声をかけてくださいね。リンクしたページをスクロールダウンすると、最新のバンクーバー観光局のビデオが見れます。四季を通して美しいバンクーバー惚れ惚れ。

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予定通り行かないことって、、、

私が働いている地域はホスピスへの移行や在宅での死が可能になるようにいろいろなシステムが整備されている。しかし予定通りにならないことも時にある。

先週2件もERにひん死状態の方が到着したのだ。どちらとも終末期であったことは明らかであったが、なぜかプログラムにも登録されることもなく、ここまできてしまったのだ。両方に共通だったことは、結構病状が安定していたのだけれど、急に状態が変わって、、、ということだった。プログラムには予後が6ヶ月以下になると登録することができる。病院などに行かなくても訪問看護とつながり、病状をモニターされるので、症状が進行すれば将来に備えて準備を始めることができる。必要な手続きさえしていれば、在宅からホスピスへ直接入院することもできる。

どうして、もれてしまったのか、、、一件目はまだまだ、地域の医師がプロセスを理解できていないことが伺え、継続して教育を行っていくことの大切さを思った。また、地域や家族への教育もまだまだ、行っていかなければならないと思った。2件目はプログラムへの紹介のタイミングだろう。6ヶ月以下と一言で言っても、本当のところは難しい。医師が持っている情報は統計や臨床経験からの見解で、必ずしも的中するという保障はない。予測より早まる人もいれば、長くなる人もいる。もちろんこのことは上司たちに報告し、再発しないためには何が大事かと検討するまでに。

で、当日に戻って、、、ホスピスへの手続きは、普通、3、4日かかるものだ。ケアの質の説明から、たくさんの登録書類、申請、認可と続き、アクセスを通って、、、と簡単にホスピスへ行ってらっしゃいとはならないのだ。しかしERは終末期の患者にとってふさわしいところではない。いち早くここから出させてあげて、落ち着いて最後の時が過ごせるようにしたいものだ。2件とも3-4日かかるすべてのことを1時間半で終わらせた。電話をあちこち掛け捲り、スピードアップを図り、受け入れサイドへの気遣いも忘れず、、、とスピードを上げてもスムースな移行になるように細心の気配りをするのだ。一筋縄ではいかないこともあった。現存の規則を曲げることもした。

おかげで両件とも、数時間だったがホスピスで落ち着いた最後を過ごすことができて、ホスピススタッフから良い入院だったし、家族が何より喜んでいた、と聞いた。最悪な状態でもその中で良い状態を作り出す、、、、それも技量なのかもしれない。

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移民とホスピス

カナダへの移民の形はいろいろある。そのひとつがスポンサーである。カナダの市民権を持っているものが、新しい移民者の保証人となって移民が行われるケースだ。結婚移民と言われるのがこれだ。スポンサーをするためには職業や財産などを審査される。そして移民後10年間その移民者の世話をすると契約を結ぶ。世話をするとはどういう意味だろう?

カナダは福祉国家である。所得が低かったり生活苦があると政府が面倒をみてくれる。社会保障が充実している。こういう保障を受けず私がこの移民者を10年間世話をするという意味だ。だからスポンサー移民は生活保護が必要な状況になっても他の市民のように援助を国から受けることができないのだ。

で、先日ホスピスへのプロセスをしていた患者さん。ホスピスフィロソフィーについて話していた時は、そんなすばらしいところへ行けるなんて、と喜んでいた。しかし費用のことになった時、急に顔色が悪くなった。カナダでは医療費は無料である。この医療費とは急性期病院での医療費のことを指す。慢性期となり長期療養型の施設は無料ではない。といっても政府がある程度負担してくれるので個人負担は一日3000円程度となる。住居があり食事とケアがついてこれぐらいは悪い値段ではない。1ヶ月で9万円強だ。ホスピスは長期療養型施設と位置づけられているので同じ額の個人負担が発生する。市民の中にはこの料金さえ払えない人もいる。そういう時は社会保護制度が働き、収入や財産によってそのお金さえも政府によって25から100%賄われる。このような個人負担がバリアとなりヘルスケアへのアクセスが阻まれることを避けるためだ。だから、ほとんどの市民が個人負担金を心配することはない。

しかしこの患者さんは英語を話さない移民、、、、。通訳を通して「移民して何年ですか?」と訪ねると「来年の1月で10年です、、、」と暗い一言。娘曰く「この人の保証人となった人は6年前に死にました。私も夫も働いていません。息子も(患者の孫)仕事中に怪我をして働けない体になりました。嫁が一人で6人を食べさせてくれているのです。生活はギリギリです。これ以上お金を出すことはできません、、、」と。あ~厳しい状況だ。私はチームのソーシャルワーカーを呼んだ。状況のアセスメントをして欲しいと。彼女曰く「やってみるけど難しそう、、、、」と。

一人がカナダへ来て次々と家族を呼び寄せる移民者は多い。しかし英語を話すこともできず、自国と同じような職業に就けない人、予想もしなかったような病気で保証人を失くす人なども多い。スポンサー移民でも健康チェックを受け持病がないことを検査される。移民による医療費の高支出を防ぐためだ。高齢者のスポンサーをすることの意味を深く考えて決心する人はいったいどれくらいいるのだろうか。それとも家族(親戚も含めて)が一緒に新しい国で暮らすことが何よりも大事なことなのだろうか。家族、親戚みんなで力を合わせて長期医療施設への入院を避ける移民者は多い。そして彼らは言う、「自国に残っていたら、こんな高度な医療は受けることができなかった。家計が苦しくてもこうして生きて行けることを考えると移民してきたことを後悔しない。」と。政治も安定していて高度な医療を受けることができる国から移民してきた者としてはなかなか理解できない言葉だ。

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