ホスピス、緩和ケア看護覚書*カナダ編

カナダでホスピス看護師をしています。2009年9月からバンクバーの某大学院 でMaster of Science in Nursing を始めました。End of Life CareのCNSになれるようにがんばります。半学生、半看護師の生活です。そして3児の母親でもあり、カナダ人の夫とは11年たっても熱愛中でごじゃいます。ブログに登場する人物名はすべて仮名です。

看護師

2週間がたち

震災から2週間がたちました。死亡者数はどんどん増えるのに、行方不明者は減るどころか増えて、毎日インターネットのニュースに釘付けです。生存者の方のお話は心が痛むものばかりで、何かしたい!と心を動かされます。

看護師なのでボランティアで医療活動ができないかと考えました。入っているメーリンググループの関係でそのひとつに参加しようと思っていました。しかし現時点は返事待ち状態。そんな中、原発問題が悪化。カナダは日本への渡航を自粛するようにしているので(危険区域として)、旅行保険を買っても何かあったとき保障してもらえない状態。旦那や家族はもちろん大反対。何かあったらどうするのかと。飛行機は飛んでいる。しかし、帰省を断念した日本人の友達もいる。独り身でないので慎重に考えなければならない。

こちらにすんでいる日本人の人たちは募金集めに力を入れている。仕事場で公共の場で。ボランティアを進んで行っている人たちに脱帽だ。ウェブサイトを立ち上げた人もいる。

JALのマイレージやSaveonfood(食料品店)やShoppersdrugmart(薬局)のポイントを寄付することもできる(それぞれがポイントをお金に換算して赤十字に寄付する)。カナダの電話局が日本への電話を無料としている。Japanaチャンネルが無料で視聴できた(今もしているのかは知らない、テレビは見ないので)。日本人同士でTシャツを作って売上金を募金へと計画している人もいる。

海外あちこちでこうした活動がみられる。だからがんばってください。日本へ届きますように。

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在宅点滴療法

も主な訪問の仕事です。と言っても薬の投与は患者や家族の役割で、ドレッシングチェンジやトラブルシューティング、そして患者教育が私たちの主な仕事。蜂か織炎とかじょくそうの抗生剤の治療はとても長期にわたるもの。そのためだけで病院に入院させるより、自己管理を在宅でさせる、という方針で。PICCとかMidlineで退院となる。薬剤は薬剤会社が点滴に必要な物品(点滴架台やチュービング、フラッシュに使う生食入り注射器などなど)と共に宅配へ送ってくれる。自分で自分の点滴療法の管理をする、、、て簡単じゃないものだ。

先日訪ねたのは78歳のおじいちゃん。糖尿病から静脈炎を頻回に起こすようになり、結局片足を切断。がんばってリハビリをして義足で車まで運転できるようになったのに、健足が今度は蜂か織炎へ。在宅点滴療法の対象となった方。退院以来、毎日のように訪れて患者教育をしてきた。7日目だった。3日ごとにすべてのチューブを交換しなければならない。その教育だったが、なんとも痛々しいものだった。チェックリストを読みながら、ひとつひとつ行っていくけれど、緊張や不安がひしひしと伝わってくる。焦ってラインをひっぱてみたり、PPD(キャップ)を取ろうとしたり(そんなことしたら血がドバーっと出てきます)。それは絶対とらないですよね、と看護師に言われると、”そうだ!もちろんそうだよ!”と恥ずかしさを隠しながらも平然な顔を見せていることがうかがえる。妻は盲目で手伝うことができないから、自分がしっかりしなくては、とやる気は満々なのだけれど、大丈夫なのだろうか、、、と私まで不安になる。

抗生剤の投与は一日一回、30分ぐらいで終了する。しかし薬を混ぜたり、清潔を保ちながらフラッシュを前後にして、と学ぶことは多い。せめてフラッシュだけでも自分でできるようにしなければならない。彼は前回3ヶ月間外来に点滴のために通った。車が運転できない今(健足に体重をかけてはいけない)、毎日の外来通いより、在宅で、、、との思いだ。

患者の自己管理ができればできるほど、看護師の役割は小さくなる。このケースを見学しながら、リスクとの関係をどう判断するのだろう、と思った。どうしても習得できなければ、訪問が毎日投薬のために訪れなければならない。そういうケースも多いそうだ(高齢化で仕方がないでしょう)。それでも入院するより費用は安くつくとか。医療費削減、こういうところにも現れているのね。

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つらい

書けない時は書かない方が良いというけれど、締め切りまで1週間を切ったのでそういうわけにはいかず、無理やり押し進めているところ。相変わらずだ。

もともとマスターを始めた時、卒論に向かってやりたかったことはホスピス看護師の燃え尽き症候群と上司の質の関連性をしらべたかった。私の論理としては看護師をサポートするべき上司の働きが燃え尽き症候群を防止する大切な役目をしていると思っていたからだ。証明できればスーパーバイザーの時間数を増やすことができるし、なんて思っていた。各ターム毎のペーパーもそれに焦点をあてて、しっかり成長の後もみられた。しかしクリニカルが好きな私にとって4年も引きずっていけるほど興味のある内容ではない。それにこれだけ緩和に情熱をもっていて、実際の緩和看護に関することの方がよっぽど楽しいに決まっている、と方向転換を考え出したこの秋。サイコソーシャルオンコロジーをとっているおかげか目移りするほどの内容でなかなか絞れなかった。昨年日本へ行ったときに日本でのがん患者の家族への看護、特に子供のケアが不足していることを痛感し、それに絞ろうかと思っていた。リサーチも結構進んでいた。

ところがグループプロジェクトでしていた。”セクシャリティーとがん”。プロジェクトのために患者の妻にインタビューをしたことをきっかけに、”これだ!私はこれをやりたいのだ!”と固く誓ってしまった。この分野を極めてセクシャリティーとがんについてだったら美加に聞いて!といわれるぐらいのスペシャリストになろう、この内容で講演に来てくださいと頼まれるようになろう、と思った。この分野はまだまだリサーチ文献も少ない。セックスと死は二大タブーと呼ばれているほどあって、教育の面でも遅れている。しかしこれで悩んでいるがん患者はとても多いのだ。

タームペーパーを書くために、沢山の文献を読み、飽和状態に近い。頭がいっぱいなくせに書けない。あと一週間、、、、がんばれ!これが終われば冬休みだ~

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面と向かって

カレンの母親がカレンがぜんぜん食べれないし、水分もとうとう取れなくなったから補液をしてほしい、と尋ねてきた。母親いわくこれがカレンの希望だと。カレンは私の受け持ちではなかったが受けもち看護師の経験が浅く、私に対応を頼んできた。

カレンは39歳、幼い子供を残しての旅たちになる。私はカレンと二人っきりで話をすることにした(もちろん受け持ち看護師は経験のため私たちの会話を観察していた)。

ベッドサイドに座って自己紹介をする。そして今の体調や気分から話を始めた。カレンは補液をしてもらえば呼吸苦や痛みが和らぐのではないかと理由を話す。水分を取るべきだと思うけど体が受け付けないし、飲もうって気になれないと。私は死が近づくにつれて体に起こる現象を話した。元気な時、のどが渇いて水を飲むといい気分になれたでしょ?あれは体に水分がいきわたってすっきりするのではなく、口の中が一瞬に潤されるから気分がよくなるのよ。体がほしがっていないのは、体がもう水分もいりませんとサインを送っている証拠。それよりも口腔ケアを頻回に行って口腔内を潤させることが大切ですよ、と口腔ケアを行った。カレンは気持ちが良い、と喜んだ。補液による成り行きも話した。

今までこうして話したことがないカレンに面と向かって話をするのはつらい。しかし正直に「死に向かって自分はどのあたりにいると思う?」と聞いた。彼女は「もう大分近いんじゃないかな」と言う。「小さいお子さんもいるし、遣り残したことをはありますか?」の問いに彼女は「なにもかもやれるだけのことはしたの。もう思い残すことはないわ。私もう死ぬ準備はできているの」と。その後カレンは補液はいらないわ、と言う。私もそう思った。補液が必要な理由がみつからなかったからだ。続けて私は「怖い?」と聞く。彼女は「怖いわ。私苦しむのかしら」と。私はもっと身体的変化の話をして呼吸苦や痛みはしっかりコントロールすることを約束する。カレンは安堵からかウトウトしだした。彼女が眠ってしまうその前にもうひとつ質問「自分の人生の最後の時間、どんな風にすごしたい?なにか希望はある?」と聞く。きょとんとする彼女。私は他の患者の例を挙げる。すると「ママにそばにいてほしいの」。「お母さんだけ?他には?」「それから夫と、でも子供はだめ、、、この二人だけ私が死ぬときそばにいて欲しい、、、」と。「今日話したことをしっかりカルテとカーデックスに書いて看護師や医療者全員があなたの望みがわかるようにしておくから」と話すとカレンはウトウトしだした。

そして今度はカレンの母親とカレンとの会話の話をした。彼女は目を潤ませながら「驚かないわ、彼女一生懸命がんと生きてきたから、、、もうがんばれなんて言えないわ。安らかに逝って欲しい、、、これで私もすっきりした。ありがとう」と。

受け持ち看護師はひたすら感心していた。素敵な会話だったと。Wowの連発だった。そんなに感心されても、、、しかし初対面でもこうして深い会話とサポートができる。私も経験をいっぱい積んできたのか、と改めて思った。簡単ではない。しかし想像できますか?はいはいと簡単に補液をはじめてもカレンの望みを満たすことができない。それどころか余分な水分を機械的に投与することで苦しめるかもしれない。カレンの死に対する恐怖。面と向かってしっかり説明することで軽減された。しなかったらどうなることでしょう?こういう重たい会話がきちんとできる。ホスピス看護師として大切な技術と技量だと思っている。

 

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