ホスピス、緩和ケア看護覚書*カナダ編

カナダでホスピス看護師をしています。2009年9月からバンクバーの某大学院 でMaster of Science in Nursing を始めました。End of Life CareのCNSになれるようにがんばります。半学生、半看護師の生活です。そして3児の母親でもあり、カナダ人の夫とは11年たっても熱愛中でごじゃいます。ブログに登場する人物名はすべて仮名です。

緩和ケア

パワフル

YouTubeで見つけました。患者さんの声ほどパワフルなものはない。

話の中で自分ががんだったら診断や予後について告知してほしい、と答える人が多いのに、家族の立場で患者に伝えてほしいと思いますか?という問いに「思う」と答える人が少ない、とありました。

同じ質問をカナダでしたらどうなるだろうと考えました。きっと同じような回答かもしれない。死に逝く人を前にどうやって接して良いか「わからない」と思う人は北米でも少なくないからだ。以前にもの書いたが、こちらの告知率は100%。どうしてかというと情報の提供は義務として課されているからだ。以前にも書いたが患者を飛ばして家族に「どうしましょうか」と相談することは医療者として情報の守秘義務に反するので行ってはいけないことだからだ。

先も言ったが死に逝く人を前に戸惑う人は多い。ホスピスの名を聞いただけで嫌悪する人もいる。最後の最後までホスピス緩和ケアのサポートを拒否する人もいる。難しいケースはたくさんある。しかしこちらではボランティア団体や医療者がそういう人たちをサポートでいるようにトレーニングを受けている。そこが大きな違いかもしれない。

「死ぬ前にたった少しの時間でもよいから家に帰りたい」死ぬ前にやっておきたいことの話もビデオの中であった。とても大切なことだ。残された時間を有意義に、そしてやっておきたいことをやり遂げることができるようにサポートすることは重要なこととホスピス緩和ケアの中で位置づけられている。こういうことができるためにも患者本人が予後を知ることは大切だ。これをサポートできる医療と社会の体制が日本で整ってほしいと思った。

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自殺企図

休憩から戻ってくるとカバーしてくれた看護師がさっきアマンダの娘が電話でアマンダは自殺企図があるから、今夜はしっかり睡眠薬をあげて変なことをしないように眠らせてって言ってたわよ、と言う。なになに自殺企図???アマンダの娘曰く、今までアマンダはこんなこと一度も口にしたことない。きっと鬱にでもなっているのよ、って。そういえばアマンダの親友も帰り際に”欝っぽいからどうにかしてくれ”って言っていた、と休憩前の会話を思い出す。

もう一度カルテを読んでみる。看護師、医師、MSWとの記録。そして患者のところへ向かう私。

 

ベッドサイドに座ってアマンダに症状のことを聞く。今は落ち着いていると。身体的な症状以外は?と尋ねると”気分は最低よ。疲れたの、私本当に疲れたの、自分の体がどうなっているのかわからないし、トイレも自分で行けなくなったのよ。もう疲れたの生きていることに。だから早く終わってほしいの!”とはき捨てるように言った。私は黙って彼女の手を握りながら聞いた。”どうして便がコントロールできなくなったりするのよ、これからどうなるのよ”と怒りと不安が入り混じった声。私は数日前緩和ケアの医師が診察したことを覚えているかどうか尋ねた。彼女は忘れたわ、知らないわよ、と即答する。私はその日アマンダは同じように身体的変化がどういう風に起こるのか不安で医師に説明を求めたこと、説明を聞いた後に彼女が落ち着いたことを話した。アマンダの表情が変わった。思い出したような顔だった。私は続けて、今起こっていることはあの時医師が話したことではないですか?と静かに確認するように話した。アマンダの目が静かに閉じた。そして”もういいわ、私話すことにも疲れたの、あなたどこかへ行ってちょうだい”と。ゆっくり立ち上がりながら”いつでも質問があったり、話したくなったら呼んでね”と病室を離れた。

 

自殺企図ではない。今まで接してきた多くの患者も同じようなことを言った”もう疲れたの”と。簡単には説明できない、簡単に通り過ぎることができない、心にとってつらい道を歩んでいる人たち。少しでも力になれたなら、、、と思った。

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