ホスピス、緩和ケア看護覚書*カナダ編

カナダでホスピス看護師をしています。2009年9月からバンクバーの某大学院 でMaster of Science in Nursing を始めました。End of Life CareのCNSになれるようにがんばります。半学生、半看護師の生活です。そして3児の母親でもあり、カナダ人の夫とは11年たっても熱愛中でごじゃいます。ブログに登場する人物名はすべて仮名です。

被害者

性的虐待

家庭内暴力について書いたついでに、性的虐待についてもちょこっと。

ホスピスに就職する前にSANEになろうかな、と思った時期があった。病棟に貼られていたポスターをみてちょっと引かれた。SANEとはSexualAssultNurse Examinerの略である。性的虐待を受けた人を看護するスペシャリティーだ。特別なトレーニングを受け認定されると、ERに所属して患者が来るとポケベルで呼ばれる。

患者はトラウマ的経験をしているので、それに対する看護。そして証拠の収集に当たるわけだ。体はもちろんのこと、髪の毛や衣服に付着したものすべてが法的証拠品となるので、決まりに沿って収集しなければならない。身体的所見の観察と記録を患者の心のケアをしながら進める。一人の被害者にたいして12時間ぐらいかけて収集することもあるとか。

被害者は若い女性ばかりではない。高齢者だったり、男性であったり。私の職場は13歳以上の被害者の診察と看護にあたるのがSANEだ。ERを訪れる被害者は現場から警察官に付き添われて来たり、異常に気づいた両親に付き添われたり、一人でこっそり来る人もいる。法的証拠の収集をしてもすべてが起訴になるわけではない。起訴を取り下げる被害者は多い。起訴をするかしないのか、そういう相談を受けるのもSANEの仕事。

被害者が性病など感染病に被害によってかかっていないか、妊娠をしていないか検査やフォローアップするのもSANEの仕事。起訴となり証言者として法廷に呼ばれることもある。

こういう仕事柄、SANEには強いコミュニケーションスキルと生体を細かく観察できる観察力、正確に記録を残せるスキルなどが要求される。新規採用のオリエンテーションでトレーナーは言っていた。ハウスパーティーとかで仕事を聞かれて正直に答えると、思いがけない人たちが過去のつらい経験を話すのよ。それだけ被害を受けても泣き寝入りしている人が多い、ということよね。こういう制度があると知らない人も多いのよ、と。なんだか素敵なしごとだな~とますます引かれた。しかしちょうどそのころ絵里佳を妊娠していることを知り、トレーニングが終わるころはお腹の大きいSANEとなることを知った。そして同時にホスピス開設のニュースを聞き最終的には申し込まなかった。

SANEはどこの病院にもいるというわけではない。私の働いている地域は10ある病院の中で2つしかない。ないところにこの理由で訪れるとSANEのいるところに搬送される。起訴をするしないにかかわらず、自身の体と心の健康のためにも被害にあったらSANEをおとずれることをすすめたい。

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家庭内暴力

最近身近なところで離婚が続いた。そのうち二件が家庭内暴力に関連して。そんなおかげでカナダで家庭内暴力がどのように扱われるのか知ったので、ここでちょっと。

家庭内暴力の通報で警察はすぐ飛んで来てくれる。よくあるのがことが大沙汰になったと通報したことを後悔する被害者が多い。すみません間違いでした、とつき返すわけにはいかない。そして被害者が「大丈夫です。私が間違えて通報しました」と言っても警察官自身が状況判断をして接触禁止令を出すことができる。7週間とか家に近づくことも許されない。だから例えば父親が子供や母親に暴力をふるい、接触禁止令を出されたら、父親が家から出なければならない。父親は親戚の家とか友人宅やホテル暮らしの7週間が待っているわけだ。これに反すると次の罰則が待っている。もちろん次の罰則も恐れず暴力がエスカレートすることもある。そういうケースのために子供連れで入れるシェルターも各市に備えてある。シェルターのセキュリティーは高く、簡単に訪れたりすることはできない。シェルターにはカウンセラーも常駐していて、心のケアやどんな保護が受けられるのか、離婚をした時にどんな権利が生まれるのかなどを丁寧に教えてくれる。

家庭内暴力の現場で通報せず、事後報告でも警察は動いてくれる。被害家庭の全員一人ずつと面接をして事情聴取後、逮捕とか接触禁止令の発令となる。面接官はトレーニングを受けた警察官だ。子供の発達段階なども踏まえてそのレベルにあった面接をしてくれる。

弱者が守られているのね、と安心する。

最近日本で続いた子供の虐待。カナダではこれもとても厳しく扱われている。子供の泣き叫ぶ声が続くのを聞きつければ警察を呼ぶのは市民の義務のようなものだ。暴力だけでなくニグレクトもだ。例えば学校の先生が異常に気づき通報すると、チャイルドサービスからカウンセラーが家の状況を見に来たり親と面接をしたりする。観察のポイントは安全な環境。衛生面、食物など生きていくために必要なものがあるのかなどだ。少しでも疑わしとチャイルドサービスによって子供は取り上げとなる。同僚でスエーデン出身の看護師がいた。彼女の母国ではサウナは赤ちゃんから大人まで楽しむものだが、カナダの公共の場では13歳以下の子供のサウナ使用を禁止しているところが多い。彼女の子供がサウナ中に痙攣を起こしてERへ連れて行った。痙攣は重篤なものではなくすぐ落ち着いたのだが、彼女を待っていたのは虐待の疑惑。子供をサウナに入れていたからだ。長く続く面接。私の文化ではこれは虐待ではない、と何度説明しても聞いてもらえなかった、と子供を危うく取り上げられるところだったとか。逮捕されることもなく子供と一緒に帰宅できたのだが、ひやひやする話だ。カナダは移民者でできた国。いろいろな文化が入り混じっている。日本では「しつけ」の延長線上、手や頭をパシっとたたいたり、声を上げたりすることを異常と思う人はいないと思うけれど、それをここですると「普通」とはとられないのでご注意を。

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