家庭内暴力について書いたついでに、性的虐待についてもちょこっと。
ホスピスに就職する前にSANEになろうかな、と思った時期があった。病棟に貼られていたポスターをみてちょっと引かれた。SANEとはSexualAssultNurse Examinerの略である。性的虐待を受けた人を看護するスペシャリティーだ。特別なトレーニングを受け認定されると、ERに所属して患者が来るとポケベルで呼ばれる。
患者はトラウマ的経験をしているので、それに対する看護。そして証拠の収集に当たるわけだ。体はもちろんのこと、髪の毛や衣服に付着したものすべてが法的証拠品となるので、決まりに沿って収集しなければならない。身体的所見の観察と記録を患者の心のケアをしながら進める。一人の被害者にたいして12時間ぐらいかけて収集することもあるとか。
被害者は若い女性ばかりではない。高齢者だったり、男性であったり。私の職場は13歳以上の被害者の診察と看護にあたるのがSANEだ。ERを訪れる被害者は現場から警察官に付き添われて来たり、異常に気づいた両親に付き添われたり、一人でこっそり来る人もいる。法的証拠の収集をしてもすべてが起訴になるわけではない。起訴を取り下げる被害者は多い。起訴をするかしないのか、そういう相談を受けるのもSANEの仕事。
被害者が性病など感染病に被害によってかかっていないか、妊娠をしていないか検査やフォローアップするのもSANEの仕事。起訴となり証言者として法廷に呼ばれることもある。
こういう仕事柄、SANEには強いコミュニケーションスキルと生体を細かく観察できる観察力、正確に記録を残せるスキルなどが要求される。新規採用のオリエンテーションでトレーナーは言っていた。ハウスパーティーとかで仕事を聞かれて正直に答えると、思いがけない人たちが過去のつらい経験を話すのよ。それだけ被害を受けても泣き寝入りしている人が多い、ということよね。こういう制度があると知らない人も多いのよ、と。なんだか素敵なしごとだな~とますます引かれた。しかしちょうどそのころ絵里佳を妊娠していることを知り、トレーニングが終わるころはお腹の大きいSANEとなることを知った。そして同時にホスピス開設のニュースを聞き最終的には申し込まなかった。
SANEはどこの病院にもいるというわけではない。私の働いている地域は10ある病院の中で2つしかない。ないところにこの理由で訪れるとSANEのいるところに搬送される。起訴をするしないにかかわらず、自身の体と心の健康のためにも被害にあったらSANEをおとずれることをすすめたい。
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